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逃亡見聞録_d

南から逃げてきた

猿の卒業。

卒業

一年遅れで友人が大学を卒業する。永らく燻っていた彼は、ようやく働き口を見つけ、モラトリアムにケリをつけることにしたらしい。おめでとう、と率直な気持ちを伝えたが、どうもそれを祝いに片道2時間弱の母校まで向かわなければならないらしい。面倒である。

まったく、卒業なるイベントに興味がない。自分の卒業式も面倒だったので出席しなかった。ただ、自分も一年遅れの卒業だったので、諸処の手続きでお世話になった事務の方に挨拶に伺った程度である。無事卒業しました。ご迷惑をおかけしました。

こういった考えは安穏な学生生活でしっかりと磨かれた反骨精神から来ている。堅固に守られた環境で、自分のような怠け者がアイデンティティを得るには、反抗するしかない。もちろん、気概だけで行動はしない。そのおかげか、わりと楽しく学生生活を過ごせたと思う。過去に学生運動がブームだったのもわかる。反抗するだけってめっちゃ楽しい。

ただ、やはりその気概も萎えてくる。萎えてしまうと、学生生活そのものが飽きてくる。結果、卒業式めんどくない?と立つ鳥跡を濁さないだけでなく、いた痕跡すら消そうと躍起になるのだ。

ぐちぐち考えながら、友人を訪ねたところ、どうも卒業はまだ先になるらしい。首をかしげる。「秋に卒業するのがもう決まったんだ」と胸を張る彼に、モラトリアム最後の輝きを見た。

銭湯

週末、近所の銭湯に足を運ぶようになった。小さな銭湯で、土日の朝は当然のように老人でいっぱいになる。平日に訪れたことはないが、毎日この様子なのだろう。接骨院と銭湯は年を食った人間のテリトリーである。

湯の温度は60℃。熱い。しかし、皺くちゃの猿にしか見えない老人達はなんともなく湯に浸かっていて、余計に猿に見える。南国生まれのなまっちょろい半端者はムキたてのイチモツみたいなものなので10秒も浸かっていられない。縄張り争いに負けた猿のように、唇を噛み締めながらジャグジーを楽しむのであった。